ごあいさつ of 公益財団法人人材育成ゆふいん財団

ごあいさつ

ゆふいんの「ほんとうの時間」を子供達に

公益財団法人人材育成ゆふいん財団 理事長  溝口 薫平

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 ゆふいんを振り返るにはいろいろな方法がある。由布岳を見上げ語りかける。石畳の道をゆっくりと歩く。温泉に浸かり目を閉じる。昔の思い出に包まれ懐かしさが蘇ってくる。

 私の方法のひとつに一本のビデオを見るということがある。十数年前につくられた『湯布院の時間~クアオルトの道』という当時の湯布院町を紹介するビデオだ。

 ゆふいんの四季のうつろひを描く中に、多くの子供達が登場する。子供達は歩く。走る。水の中ではしゃぐ。草木は芽吹き、花は咲き、清き水は流れる。子供達はゆふいんの四季の自然のゆたかさを満喫している。

 このビデオの中ではミヒャエル・エンデの『モモ』という話から多くの言葉が引用されている。

「時間とは生活です。人間が時間を節約すればするほど生活はやせほそってなくなってしまうのです」

 子供達は、時間を節約することなく、ゆふいんの生活をたっぷりと感じながら大きく育まれてきた。十数年という時が過ぎた。あの時の子供達は今頃どこで何をしているのだろうか。

 当時、私はよく言っていた。

「ゆふいんを出て行く、それも良いことです。外へ出て多いに勉強してきてください。そしていつかはゆふいんに必ず戻ってきて下さい」

 そう語りかけながら、彼らが戻ってきたくなるような「故郷ゆふいん」を守っていかねばならないと自分にいつも言い聞かせてきた。

 そのビデオにはモモの次の言葉も挿入されていた。

「ほんとうの時間というものは、時計やカレンダーではかれるものではないのです」

 ゆふいんの『ほんとうの時間』を子供達とともに味わいたいと思う。子供達が夢を抱いていける地域をつくるとともに、子供達の夢を大きく育む『ほんとうの時間』をつくっていきたい。

 若葉が輝き蛍舞うふるさとの風景を眺め、財団に携わってきた時を振り返り、私はそう思う。


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